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執筆者の写真原田洋一

正解を教えて!

更新日:2019年12月20日


*写真はイメージです。

セッションを続けていると、まあいろいろと観察のしがいのある子どもがいて、飽きることがありません。先日のセッションでのことです。

けっこう時間より早くやってきて、一番前の席に陣取った男の子がいました。4年生だそうです。

このときは3回目のセッションだったので、その子はもう2回僕の講義を受けているわけで、その日も顔なじみっぽい感じで、妙になれなれしく話しかけてきてくれます。

僕のセッションでは、その日の内容を簡単にまとめたA4裏表の紙を持って帰ってもらうことにしてました。これは、EV3を持って帰ってもらうわけにはいかないため、家に帰って少しでもやったことを思い出してもらえればということでやっていました。この資料は最初から各自のテーブルの上に置いてあります。

その日、最前列に陣取ったその子は、早速それを手にとって、「ここに書いてあるプログラムうつせば、ロボット上手く動くんだよねー」とか言うんですね。その言い方が、まるで「宿題なんか出たって、俺自宅に教科書ガイド持ってるからねー」というのを自慢しているような感じ(昔そういう同級生がいた…^^;)だったので、思わず笑っちゃいましたが、本人は大真面目。

「今日の課題も、これうつせばできるんでしょー」みたいな事を言うので、「いや、今日はもうちょっと難しいぞー」とか言いながら、実際はちょっと冷や汗。実はその子の言うとおり、それを写して、パラメーターの数字をいじれば、最低限の課題クリアーはできるはず。

まあ、子どもに裏技を見破られてしまったような気分でした。でも、セッションを始めると、やっぱり半分も人の話をきいてなくて、何か全く違うことを、しこしこ自分でやってる。最後はこれうつせばどうにかなるという安心感からか、講義中は遊んじゃうということなのかなあ。

まあ、こんな感じなのですが、彼はその後4回目も、5回目もやってきて、科学館では僕の一連のセッションの最初の卒業生になりました。ただ、4回目も、5回目もだいたい態度は同じ。だんだんやる内容も難しくなっていくんですが、5回目くらいになると、さすがに全然ついてこれてない。画面を覗くと、なんだかわけの分からないプログラムを作ってるので、「あれ、これさぁ、前にやったよねえ。ほら、ここ、こういう設定だとうまくいかないからさぁ・・」とか優しく声をかけると、

 「おれ、前にやったことなんてひとつもおぼえてないから・・・」

 「家にEV3ないんだから、おぼえてられるわけないよ・・・」

 「俺の頭は、毎回オールクリアされてるってわけ!」

 「目を離したすきに、いつの間にかプログラムが全部消えてる・・・」

  (おいおい、それは自分でやったんだろう)

とか、もう開き直っちゃって、まあかわいくないこと(笑)

こちらに向かう態度が、基本的に「手っ取り早く正解教えてくれよ」という感じなんですよね。プログラミングというのは「唯一の正解なんて無いんだ。同じ動作するにしたって、プログラムの書き方はいろいろある」「発想を変えれば、いろんなアプローチがあるのがプログラミング」ということは、ずっと言い続けているつもりだし、だから「自分でいろいろ考えて試行錯誤しようね」というのが基本なんだけど、「全く伝わってない」^^;

でもそんな彼でも、あるとき「やった! できた!」とか小さく声を上げてる瞬間があったことを、僕は見逃しませんでした。そういう小さな成功体験を積み重ねていってくれれば、彼だって成長していけるはず。なんたって、これだけ毒づきながらも、「次があればかならず来る」ってアンケートを残してくれるんですからね。

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