あるセッションのとき、すごく積極的な子供がいました。男の子で、たぶん5年生くらいでした。
「超音波って知ってるー?」「センサーってどういうもの?」とか、こちらが質問することに、真っ先に手を上げて答えてくれます。しかも、その答えの内容がほとんどパーフェクトなんです。
こりゃすごい子がいるもんだなぁと思って、話を進め、いつものように、最後に課題をだしました。コースを作って、そのコースを走るプログラムを自分で作ってもらうというものです。その日に説明したプログラムを使って実際に自分でプログラムを作ってもらうわけです。
いつも、「プログラムは最初から上手く動かないのが普通だから、ちょっとできたら途中でもいいから実際に試してみるんだよ」「それで、上手く行かないところがどこかを見つけて直したら、また試してね」「これを何度もくりかえしてゴールを目指してね」ということを繰り返し言っています。
そして、優等生くんの試走の番になったのですが、いきなり全然うまく走らない。それも、ちょっと間違ったというレベルには程遠い外れっぷり。あれ?と思って彼のプログラムをのぞいてびっくり。一体何がしたいのかさっぱりわからない、かなりメチャクチャなプログラム。
「これじゃ上手くいかないよねえ。まず、最初にいきなり変な方向行ったでしょう。それ、どのプログラムブロック?」と声をかけたのだけど、なんかすごく迷惑そうな感じで、人の話を聞く姿勢をまったく見せてくれない。もう一度話しかけると、今度は無言で、別のところのブロックを適当に入れ替えはじめて、もう一度コースに行こうとする。
「いやいや、まずさぁ、一番最初のところのプログラム直そうよ。スタートした瞬間に変な方向行ったでしょ。そこ直ってないよー」と声をかけるも、「これでいいんです!」と言い切って、再チャレンジ。
結果は、予想通り。あたりまえだけどプログラムは正直。
その後もチラチラとどうするか見ていると、次もささっとブロックを入れ替えて、適当な手数が終わると、もう一度走らせようとしている。全く考えてプログラミングしているように見えないのですね。
あんなに利発に質問に答えていたのに、どうも人の話を聞いて、その内容を積み上げて順番に理解する。それをもう一度構築するというのが全くできていない模様。つまり、この子は多分本や、知識として何かを覚える記憶力は抜群で、おそらくクイズみたいなものはものすごく良くできるけど、よく言われる「論理的な思考力」方面は弱いということなのでしょう。
この子は恐らく、今小学校では優等生なのではないかと思います。でも、このままの調子だと、中学校入ったくらいから苦労するのではないかなぁと思ってしまいました。
プログラミングをやってみるというのは、こんなことまでもあぶり出されるのですね。こういうところにも、プログラミング教育の可能性を感じたのでした。
ただ本当は、こういう子どもこそ、じっくりとプログラミングに取り組んでもらえば、きっといい影響があると思うのですが、この子はその後のセッションにはもう来なくなってしまいました。ちょっと残念ですね。