• 原田洋一

子どもたちのタイピング事情

 ロボット・プログラミング教室BRIDGEでは、生徒さんにローマ字タイピングの練習もやってもらっています。教室は今年(2022年)の9月で5周年となるのですが、この間でも案外子どもたちの状況が変わってきているような印象を受けています。 


 やはり、一番影響を与えたのは、学校で配布されたGiga端末であるのは間違いないと思います。自分が専用で使えるキーボード付きの端末を配布された子どもたちの中で「タイピングをやってみよう」という意欲が顕在化したような気がします。(教室がある東京都大田区は、Giga端末としてChromebookが配布されていますので、100%キーボード付きの端末です。目黒区などではiPadが配布されており、こちらはキーボードが着いていませんので、もしかすると地域によって少し温度差があるのかもしれませんが...)


 そして、最近は学校で「ローマ字」の学習をする時期が早まっているようです。以前は、3年生の2学期の最後か3学期頃に国語の単元として学習するのが普通でしたが、Giga端末配布以降は3年生の早い時期に学習しているようです。そのためか、最近入室する2〜3年生の生徒さんの父兄からも、「タイピングをやらせてくれ」とご依頼されることが多くなりました。


 そのため、以前はタイピングの練習を始めるのは3年生の12月頃というのが一番多かったのですが、最近は3年生の4月から全員がタイピング練習をスタートさせています。2年生も2学期に入った頃からはじめる生徒さんが増えています。


 ところが、学校での「ローマ字学習」だけではなかなか定着しないのです。学校で習ったからといってもまるでローマ字が読めないどころか、アルファベットが読めない子ども(大文字は何とか読めても、小文字が全く読めないとか)は相当数います。これを定着させるためには、ある程度継続的な練習が必要なのです。そして、タイピングを練習していれば、そのうちローマ字なんてみんな読めるようになるのです。



 今年の4月に中学生になって教室を卒業したある生徒さんがとても印象的でした。仮にA君としておきましょう。彼は、3年生の頃からずっと教室に通ってくれていた生徒さんでした。なのでずっと「学校でローマ字習ったらタイピング始めようね」と言っていました。ところが、3年生の1月になって聞いても「まだ習ってない」と言い続けていたのです。そうはいっても、教室には同級生がいたりしますので、そちらに聞くと「そんなのとっくに習ったよ!」と教えてくれるのです。よくよくA君に聞いてみると、やはり「ローマ字覚えてないのでやりたくない」という事だったのでした。彼はそう言ってましたが、わたしが見たところ、ローマ字どころかアルファベットの大文字もかなりあやふやで、小文字に至ってはほとんど全滅だったのです。それでも、ローマ字のタイピング練習をスタートしました。



 最初は本当に嫌がっていて、それもできないのですぐに放り出そうとします。A君はそれ以外のこともどちらかというと、ちょっと分からなくなるとすぐに丸ごと全部放り出してしまうという性格が顕著だったので、タイピングの練習を継続させるのはなかなか難儀しました。それでも教室をやめずに通い続けてくれたので、じっくりと練習を継続することができました。


 最初はAIUEOのキーだけ覚えて、それを決まった指で押す練習、ただそれだけです。恐らくアルファベットの記憶も怪しいと、この時点では、画面の文字とキートップの文字の単なる絵合わせをしてるような状態なのだと思います。でも、それでもいいのです。練習はシューティングゲームのようになっているものを使いますし、ここで点数が出るので、その点数がだんだん上がっていくということをモチベーションにできるのです。こういうことで何とかなだめたりすかしたりして練習を継続しました。この先も教室ではいろいろ段階を変えていきますが、時間をかけながらもA君はなんとかこれをクリアしてくれました。もちろん、途中で小文字も含めてローマ字なんか普通に読めるようになっていったのです。


 その結果、6年生になった頃には、5分間で500文字程度のタイピングが普通にできるようになりました。このタイピングスピードは、わたしの教室では、それほど上位に来るタイピングスピードではありません。でも、ローマ字を学習しても全く定着していなかった生徒が、タイピング練習を通じて2年半くらいでここまで伸びたというのは劇的な変化だったと思います。


 最近はA君ほどタイピング(というかローマ字)に抵抗感を出す生徒さんはあまりいなくなりました。中には性格的に「絶対人に言われたとおりにやりたくない」という子もおり、こういう子はホームポジションをないがしろにして勝手な裏技みたいなものを自分でやり始めたりするので難儀しますが、結局周りについて行けなくなって、そのうちホームポジションに従った方が点数が伸びるということに自分で気づくのですね。ですので、どんな子どもでも、必ず何とかなると思います。ローマ字タイピングは、練習を継続しさえすれば、必ずモノになるのだと思います。


 ちなみに、わたしの教室のタイピング四天王をご紹介しましよう。この4人は、いずれもわたしの記録を超えた生徒たちです。わたしのタイピング速度は、5分で880文字くらいが最高でした。ちょっと最近衰えてきたかもしれませんが、これくらいで仕事上困ったことなど一度もありませんでしたし、同僚の間でもわたしは速い方だったと思ってます。ところが、4人の生徒さんにすでに超えられてしまっています。



 最初にわたしを超えたのは中学3年生(当時)の男子でした。その後小5男子、中1女子と次々と超えられてしまったのですが、ここまでは全員がわたしの教室でタイピング練習を始めた生徒さんでした。いずれも5分で900文字以上の記録を誇っていますが、このレベルに達するまでに全員3年以上かかっているんです。ところが、4人目に小6女子の生徒が続いたのですが、彼女はまだ入室1年たっていません。つまり、教室に入室した段階ですでにかなりタイピングができる状態だったのですね。そういう生徒さんは、ホームポジションをちょっと矯正しただけで、劇的に成果が出たりします。以前は本当にタイピングをある程度やっているなんていう生徒さんは滅多にいなかったのですが、最近はそういう生徒さんも増えてきています。


 タイピングを指導していて一番気を使っているのは、上達速度に個人差があることです。やはりこういうものは得手不得手があります。とんでもなくプログラミングは優秀なのに、どうもタイピングがなかなか上達しない生徒さんとかがいたりします。それはもう個性だと思います。それでも練習を続ければ必ず伸びていくのです。そして対自分で伸びていけばそれだけでいいのです。すると、中にはそういう伸びがゆっくりな生徒をあからさまに下に見てバカにするような子が出てくるので、そこが一番気を使うところでしょうか。


 実際には、5分で800文字超えるくらい入力できるようになっていれば、仕事で即戦力と言えるレベルだと思います。ですから、それくらいになったら「もうそんなにタイピング練習ばっかりやらなくて良いよ」と言ってます。タイピングのスキルは、一度ある程度以上のレベルになれば、ブランクがあっても忘れてしまうようなことはありません。一度自転車に乗れるようになったら忘れないのと同じだと思います。タイピングが上達した子どもたちに欠けているのは、漢字変換を行いながらのタイピングと、あとは自分の頭で考えた文章を書いていくという経験だと思っています。なので、このレベルに達した生徒さんには、「自分で日記をタイピングしてみたり、作文の宿題があったら下書きをタイピングしてみたりしたらいいよ」と声をかけています。こういうのは、なかなか教室の現場では練習できないことですので。







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