• 原田洋一

プログラミングが続かない子ども

更新日:8月27日

 僕の教室は、大田区上池台というところにあります。大田区というのは東京23区ではわりと人口の多い区で、その中でも上池台周辺は、大田区で一番児童数の多い小学校と、児童数第3位の小学校が隣接している地域です。駅前ではなく、住宅街のどまんなか。こういうところで教室を始めたのは、ロボットやプログラミング教室というのは、駅前の好立地にある「受験予備校」のような存在よりも、もっと身近な「そろばん教室」のようなものではないか、というよりは、そうあるべきではないか思ったからなのです。


 そろばん塾ってまさにそうですよね。駅前にドカンと構えてるのって、あまり見たことがありません。たいていは、住宅地とか、あれ?こんなところで?みたいなところにあります。そういう身近な教室というイメージを追求した結果大田区上池台という立地になったのです(たまたま僕が大田区出身、大田区在住ということで、大田区の中で探しましたが)。

 ロボットやプログラミングを学ぶというのは、そんなに構えるものでもなく、もっと普通に誰でもが思ったときに習いに行けるといいな、というか、これからはそういう時代になるのではないかと考えて、そういう教室を自分で作ってみたと言うわけです。こういう立地で探すと、実は先駆者はそろばん教室よりも、公文教室さんでした。住宅地を歩いていると、まあたくさんあること。かくいう僕の教室もおとなりは公文教室さんなのです(笑)

 さて、そんな立地に2017年の9月に教室を開校して、丸4年となりました。この間、僕の教室をやめる生徒さんというとは、たいていは親御さんの転勤とか、中学受験や高校受験に向かうためにやめるというのがほとんどで、「プログラミングが嫌になった」「プログラミングがわからない」といってやめていく生徒さんは結構希なのです。

 とはいえ、そういう生徒さんがいなかったわけではありません。サンプル数が少ないのですが、これまでのところそう言って辞めていった生徒さんは、結構特徴がある生徒さんだったんです。

1)ゲームにしか興味が無い

 子どもたちがゲームに興味があるのは、もう当然ですし、悪い事だとは思っていません。だから、Scratchとかで自分でもゲームを作ってみたいというモチベーションが生まれるのです。プログラミングをはじめるときに、こういう動機ではじめることは、問題ないどころか、積極的に良い事だと思っています。

 ところが、いざはじめてみると、「プログラミングなんかめんどくせー」となる子もいます。なかには、「こんなにめんどくせーことやって、それでこんなつまんねーゲームしか出来ないのか」と露骨に態度に表す子どももいます。こういう意識を持っている生徒さんは、やはり長続きしなくなります。

 中には、「ゲーム禁止の家庭」で、「プログラミングを学ぶのなら良い」ということで、教室に来てくれる生徒さんもいます。こういう生徒さん、全部が続かなくなるわけではないです。むしろ、その環境をバネに、教室の時間をすごく大切にして楽しみにしてくれる生徒さんもいます。ところが、そうでない生徒さんもやはりいるのです。

 あるゲーム禁止家庭の生徒さんは、Scratchを始めた瞬間は、ものすごくのめり込みました。僕の教室でも最初はよくある「ネコ逃げ」的なゲームからスタートしますが、これを作って遊びだしたら、もう楽しくて楽しくて絶叫しちゃう。ところが、そこから次の段階に行ったとたんに、さっぱりプログラムがわからなくなる。これは、よくある話で、ネコ逃げくらいのプログラムなら丸暗記できるんですが、そこから少し先に進むと、やっぱりプログラムの動作原理、ブロック毎の内容が腑に落ちてないと、すぐに分からなくなる。それでも、だいたいの生徒さんは、そこですぐにあきらめずに、けっこう食らいついてきてくれるんですが、そうならないケースもあります。またタイミングが悪い事に、その子は、ちょうどわからなくなった時期に、家庭でゲームを解禁してもらって、ゲーム機を買ってもらったんです。そうしたら、次の瞬間に「プログラミングなんてもうやらねー」となってしまい、辞めていったのでした。

2)承認欲求をこじらせている


 これは、いろんなケースがあるので、ちょっと一般化するのは難しいでしょう。そもそも、「承認欲求をこじらせる」ような状況というのは、恐らく何らか別の要因があって、その発露が教室時間内に出現していると思われるからです。

 たとえば、教室時間内に僕に対してよく積極的にアピールする子どもがいます。こういうアピールそのものはそんなに問題ないのですが、中には「自分はこれができる」「これはやったことがある」というアピールばっかりするのに、いざ実際に課題をやってみたりすると、案外できない子がいたりします。そういう子の中で、さらに「一度やったことをもう一回やるのを極端に嫌がる」という傾向があったりすると要注意です。たとえば、Scratchでネコ逃げプログラムを作って、そこはクリアした。次の課題に行ったら、こんどは全然うまくできない。これは恐らくネコ逃げレベルのところでの理解が追いついてないと判断して、ちょっともどって、ネコ逃げをアレンジした別のゲームを作らせようとすると、猛烈に反発する。「それはもうやった!」と言い張って絶対にやろうとしない。

 教室ではゲームの課題に番号がつけてあり、これが10まであります。こういう演出をすると、とにかく先に行きたがる生徒がいるのはよくわかります。とにかくゴールに向けて早くたどり着きたいというのは、人間の本能のようなもので、それもわかるのですが、こちらは形式上クリアしたとはいえ、どうも分かってないのでもうちょっと補足したいと思って別課題を出しているのです。でも、こういう子は恐らく自分が分かっていない、理解していないことは自分でも分かっていて、何とかクリアしたはずなのに何でまた元にもどるの? とか、さらに、元に戻ると分からない自分がより露わになるのを恐れて反発しているように見えるのです。こうなると、結局自分のプライドと、実力のアンバランスに耐えられなくなってしまうのでしょうね。

 また、かなり毛色の異なる承認欲求を見たこともあります。こちらも僕にいろんなアピールをしてくるのですが、その方向性がちょっとおかしい。たとえば、普通あんまり作らないようなグロい表現の作品作ってきて自慢したりする。もちろん、4年生くらいの男子で、プログラム見ると、変数やメッセージ名がぜんぶ「う○こ」「ち○こ」系の言葉だけで構成されていて、そういうものを作って喜んでる子も珍しくないのですが、そういうちょっとしたいたずら的なものでなく、もう最初っから作品の方向性がおかしい。「そういうもの普通作らないだろ」と言いたくなるようなものばかり作って、僕や周りの子たちに自慢する。それがそのうちどんどんエスカレートして、今度は「オレは気合いが入ってるんだ」「オレは特別だ」みたいな内容の話(それも、ほとんどホラ話だろうみたいな内容ばかり)を相手構わずするようになったりする。ここまでひどくなると、さすがに保護者の方に相談せざるを得なくなったりしますが、するとその結果続かなくなるということが起きるのです。こういう場合は結果的に、1人の子どものプログラミングへの意欲を詰んでしまったようで、こちらとしても本当に気になるのですが、こういうなにか特殊な承認欲求の発露を教室に求められても、やはり教室ではそれは受け止めきれないのです。



3)どうしてもプログラミングが理解できない、理解しようと思ってない

 もちろん、いくらやってもシンプルに「どうしてもプログラミングが理解できない」で辞める子もいないとは言いません。長い間通ってもやっぱり条件分岐とか、変数の扱いがほとんど理解できずに終わってしまう子もいるのは事実です。Scratchの課題の10のかなり手前でつまずいたまま先に行けなくなってしまい、いちどWeDo2.0まで戻ってやり直したりしたこともあります。WeDo2.0を使って、途中までなんとかうまく行ったかに見えたのに、やっぱり次のステップに行ったら、同じところでつまづいて終わってしまったりもします。こういうケースというのは、やはり本人の性格も関係します。たとえば、ちょっとつまづくとすぐに全部丸ごとあきらめて放り出してしまうという気質が顕著な子は、やっぱりなかなか続けることが難しいケースがあります。

 また、「理解できない」子の中には、中学受験を目指している子がいたりします。こういう子は、本当は「理解できない」のではなく「理解する気がない」のだと思います。恐らくプログラミング教室の場が、日常のストレスから逃れる場となっているのでしょう。それでも、プログラムが好きで、教室でプログラムを作ることがストレス解消になっているのなら良いのですが、どうもプログラミングには興味がない。だから何をやっても本気が出ずに、いつまでたっても理解が進まない。

 すると、そういう子はだいたい教室でもScratchでゲームして遊ぶことだけに精を出すようになります。恐らく「こんな習い事わからなくたって自分には何の関係もない」という思考に陥っているのでしょう。ただこういう場合、5年生の3学期くらいまではきっちり教室に通ってやめるケースが多いので、長続きしないというケースにはあたらないのですが。

 なんだ、プログラミング教室なんて、通っても意味ないんだな、とはぜひ思わないでください。ここに出した例は、かなり極端な例です。もちろん似た傾向を持つ子どもはいたりしますが、教室をやめるという選択にまではつながらずに、時間がかかっても徐々にプログラミングの力をつけている子がほとんどです。最初にも書きましたが、続かなくなってしまうのは、レアケースなんです。

 ただ、プログラミングについては、やはり理解度にかなり差が出るのがどうしても避けられません。Scratchでバリバリ自分のゲームを作ってる2年生がいるかと思えば、自分からはほとんど変数に手を出さずにお茶を濁そうとする5年生もいたりします。それだけ差が出るからこそ、僕の教室ではほぼ個別の対応をしているのです。そして、ひとりひとりが何かに取り組んで少しでも前進することこそが大事だと思っています。4年生のときにわからなかった変数が、6年生になったらわかって、使えるようになったという事で得られる自信、みたいな体験に意味があると思うのです。

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